熊六拾六号／聖蹟Ｋ邸「KATAOKA GALAXY」

［2015.3竣工］
自然と音楽をこよなく愛するクライアントは世界一速いスパコンを走らせる人。そして自らもDJとして自作のトラックをプレイするアーティストでもあります。

彼の要望はシンプルで
・豊かな自然に囲まれた環境
・音楽を心行くまで楽しめる空間
・鶴田氏の芸術性を遺憾なく発揮された建築の創造

この3つを満たしてくれれば、どんな作品にでも住んで見せますと言われました。
僕の芸術の炎は燃え上がりました。そして目標を定めました。

・世界一美しい音場を創造する
・その為の理想的な形状とサウンドシステムを設計する
・真の音楽建築を完成させる

音楽建築は音楽を楽しむ為に建築はどうあるべきかを追い求める哲学です。今までも様々なアプローチを試みていますが、生活与件など様々な譲歩が必要でした。純粋に美しい音場に包まれて生活する為の理想の装置、真の音楽建築を求め実現したプロジェクト、その聖域が「KATAOKA GALAXY」です。

スピーカーPA設計・製作/田口和典、音響計画/宮本宰、空間計画及びネットワーク製作/藤田猛と、日本音響界の最高の才能が集結し、音の為の理想の音場を検証しまいた。その結果、メインスピーカーの出力を逃さない不連続なシェル面でその背面を構成し、最適な音がDJブースに集まるように設計されました。結果出音が最速にブースに届き、プレイ中にモニターを必要としない出音と一体の音場が誕生したのです。

オリジナルに開発されたメインスピーカーは、上下60度の角度に音が広がっていきます。それにより、1階のフロアーから2階のDJブースまで一体の音場が響いていきます。又、映像用に計画された1階に4機、2階に2機の無志向スピーカーが死角無く音場をカバー。空間のどこにいても美しい響きを体感できる。140インチのスクリーンを下せば、10．2chiのサラウンドシステムにより1階にいても2階にいても迫力の映画鑑賞が可能です

建築の構造は木質ラーメン構造と木質シェル構造の混構造。構造のジオメトリーにスピーカーの設置位置を重ねて音響ジオメトリーに同期することで、耐震性が高くぶれない音場を同時に構築しています。

内装材には掛川の時ノ寿の森から直接桧の材を間伐加工し、床には厚み24ｍｍ、巾135ｍｍ、長さ4ｍの無垢の檜を使っています。天井の檜の反射板と共に、森から直接生まれた材料が、良質な音場を生む材料として生きている。時が経ち、材が乾燥しながら、より精度の高い良質な音場へと進化していくのです。

※ウッドデザイン賞2020 ライフスタイルデザイン部門 受賞