熊参拾号／川口W邸「音楽ホールのある家」

［2009. 3竣工］
「音楽ホールのある家に住んでみたい」。声楽家であるクライアントのオーダーは、彼女の職業柄当然の願望でもありました。旧家には防音スタジオが設けられていましたが、響きを失う防音室では歌を歌う意欲を失ってしまう。出来れば美しい響きに包まれて歌いたい。この要望を叶える為に、本格的な音楽ホールを併設した住宅を計画しました。

ホール音響として出来ればあまり防音や吸音をせずに、ホールの中で音のエネルギーが自然に減衰していく空間。イタリア留学経験の多いクライアントが、ルター派の協会のような空間をヒントに与えてくれました。プラン上は楕円、軒の水平面を円にすることで、床と軒を結んだ母線がねじれていきます。その壁面のねじれを反射面として利用し、響きがねじれた壁面を反射することで音フラットしないように、位相に拡散していく空間を作りました。屋根面も曲率はそれぞれ違う登り梁で構成することで、音の反射が1点に集まらない工夫をしています。

又、ホールとダイニングスペースを併設することで、音楽と食事を楽しめる音楽建築を実現しています。ホールとダイニングスペースは防音扉で区画することが出来、演奏の練習が生活者の支障にならない配慮や、ホールを貸し出して利用できるように配慮しました。声楽の本格的なアコースティック空間として、又オーケストラで演奏するピアニストの事前の練習空間として、多様な音楽を日々奏でています。